アインシュタインと相対性理論の世界

1章 特殊相対性理論の生まれた時代

エーテル探し----マイケルソン・モーレーの実験

光の媒体エーテル

光の正体をめぐって、粒子説と波動説が対立していたとき、波動説には大きな弱点がありました。それは波を伝える物質が見つからないということです。



海の波は海水の振動が伝わる現象です。
海水がなければ波は生じません。



音も空気を伝わる振動なので空気がなければ音は発生しません。
波は水や空気のように物質がなければ、存在できないのです。



光が波だったら、光を伝える物質があるはずです。
宇宙には光を伝える物質が充満していると以前から考えられていました。
物質はエーテルと呼ばれるようになりました。



ヤングの実験によって、光の正体が波だと分かりました。いよいよエーテル探しが本格的に始まりました。

エーテルの風を求めて

19世紀になるとマイケルソンとモーレーが、エーテルの証拠を見つけるための実験を始めました。
宇宙がエーテルで満ちているならば、地球はエーテルをかき分けながら太陽の周りを公転しているはずです。



このとき、地球が進んでいく方向はエーテルの向かい風を受けるので、この方向から来る光の速度は他の方向より速くなるはずです。



マイケルソンとモーレーは方向による光速の差を検出し、エーテルの存在を証明しようとしたのです。



ところが出てきた実験結果は、エーテルの存在を否定するものばかりでした。
どの方向を観測しても光速の差は認められなかったのです。



マイケルソンとモーレーは、この結果を実験精度による誤差と考えました。
機器に改良を重ね数年間に渡って実験を繰り返しましたが、結局は光速の差は検出されませんでした。



エーテルの証拠探しに生涯をかけ、エーテルが存在しないことを証明したのです。



この実験のポイントは、エーテルの存在を否定したことではありません。
光の速度が常に一定であることを示したことにあります。



これを光速度一定の原理といいます。
光速度一定の原理が相対性理論の出発点になりました。



ところで、媒質がないのになぜ、光は伝わるのでしょうか?
その理由は4章で明かされます。

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