アインシュタインと相対性理論の世界

4章 相対性理論以外の業績

ブラウン運動

高校の理科の教科書にも載っているブラウン運動。
これにもアインシュタインはかかわっています。
ブラウン運動を通じて、分子の正体が明らかになりました。




花粉は生き物なのか?

イギリスの植物学者ロバート・ブラウンは、不思議な現象を発見しました。
花粉を水に浮かべると,花粉はたくさんの微粒子を放出します。この微粒子がまるで振動するように動くのです。
この現象は、発見したイギリスの植物学者ブラウンの名にちなみブラウン運動と呼ばれています。



ブラウンは最初、花粉が生きていることの証拠だと考えました。
ところが岩石の微粒子なども同じような動きを見せることから、生命を由来とする説は却下されました。



ブラウンはブラウン運動を水中の現象として発見しましたが、気体中でも同様の現象が確認されています。

ブラウン運動が生命の仕業でないならば、いったい何が微粒子を振動させるのでしょうか?

運動する分子や原子と衝突することによって起こると考えた研究者がいましたが、当時は、原子の存在は立証されておらず、マッハなど高名な学者の中にもそんなものはないと考える人がいました。



一方、アインシュタインは粒子の拡散を測ることで、原子の存在を立証できると考えました。



アインシュタインの理論を知ったジャン・ペランは、この理論をブラウン運動に適用しました。



ジャン・ペランは、顕微鏡でブラウン運動を観察し微粒子の動きを方眼紙に写し取りました。
このような観測をペランは数千回にわたって繰り返し、微粒子の位置の変化と、それに要する時間を求めたのでした。
こうしてアインシュタンが提示した式の通りになったのです。

ジャン・ペラン
出典:nobelprize.org(ノーベル財団)

つまり、原子・分子が存在していること、ブラウン運動は原子・分子の運動であることが判明したのです。

さらにダメ押しも加わりました。
実験で得られた方法でアボガドロ数を求めてみると、すでに他の方法で判明していたアボガドロ数にズバリ一致したのです。
これでは、原子・分子が存在を疑う余地はなくなってしまいました。

ブラウン運動の秘密はアインシュタインによって明らかにされました。
しかも、それは奇跡の年と呼ばれた1905年、特殊相対性理論と同じ年に発表されたのです。

ペランはこの業績により、1926年にノーベル物理学賞を受賞しました。

物質の究極の姿

原子と分子

アボガドロ数ってどんな数?

モノが12個集まった単位をダースといいます。
例えば、鉛筆12本をまとめて1ダースというし、ゴルフボールも12個で1ダース。
12個でひとまとまりのダースは、計算するときに不便なイメージを持つが、筆記用具やスポーツ用品の普通の単位として便利に使用されています。
12個のまとまりを1ダースというように、6.02×1023個の集まりを1モルといいます。
1モルは化学の世界で使います。

単位使う業界
1ダース12個筆記用具やスポーツ用品
1モル6.02×1023個化学

鉛筆1ダースといったら、それが鉛筆12本のまとまりを示すように、炭素原子1モルといったら、それは炭素原子が6.02×1023個のグループを表します。



さて、炭素原子が1モルあったら、それは何グラムでしょうか?



化学の参考書には必ずと言っていいほど、周期表が記載されています。
この周期表で原子量を見てみましょう。12.011と書いてあります。


炭素原子を6.02×1023個(1モル)集めると、その質量は12.011gになります。
これから分かるように、原子1モル分の重さをグラムで表した数字が原子量なのです。



ここに1モルという集団(6.02×1023個の集団)を考えることの意味が見えてきます。
炭素原子に限らず、他の原子・分子・イオンが1モル集まれば、質量数に「g」をつけただけで質量になるので扱いが簡単になるのです。



化学反応が起こるときは、原子の集団と集団が双方入り乱れて反応します。
原子を一個だけ持ってきて反応させるというような操作は、現実にはありえません。
原子・分子の振る舞いは集団で考えるので、モルを単位とすると検討しやすくなるのです。



6.02×1023をアボガドロ数といいます。

歴史的には、1モルが何個の原子であるか(アボガドロ数はいくつなのか)を突き止めるのに長い時間がかかりました。

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