アインシュタインと相対性理論の世界

3章 一般相対性理論の誕生

アインシュタインの後悔

一般相対性理論の解釈

一般相対性理論でアインシュタインは方程式を導きだしました。
R_ij-1/2 g_ij R=kT_ij



この式によって時空の形と物質・エネルギーの分布の関係が明らかになったのです。



従来、時間、空間、物質、エネルギーは、お互いに影響を与えあわない別々のものと考えられていました。
特殊相対性理論によって時間と空間が時空に統一され、物質とエネルギーは変換できることが分かりました。



今度は、一般相対性理論の方程式によって、時間、空間、物質、エネルギーのつながりが明らかになったのです。

方程式の答えを「解」といいます。

解いた年解いた人解の意味
アインシュタイン
ルメートル
フリードマン
シュバルツシルト

この方程式を宇宙全体に適用することができます。
しかし、この方程式の解法は難しいので、初期に解けた人はアインシュタイン、フリードマン、ルメートルの三人しかいませんでした。



アインシュタインが見つけた方程式の解は非常に不安定でした。
宇宙は静的に安定していると確信していたアインシュタインは、解を補正するために方程式に宇宙項を入れした。



フリードマンは、宇宙項のないオリジナルの方手式を解き、1922年に宇宙が膨張する解を発見しました。



同様にルメートルも宇宙が膨張する解を発見しました。




宇宙は閉じているか開いているか

宇宙は膨張していた!

ハッブルは当時世界最大の望遠鏡を使って、遠方の銀河を観測していました。
当時、遠方の銀河はみな銀河系から遠ざかっていることが分かっていたので、ハッブルは遠ざかるスピードと、その銀河までの距離を研究していなのです。



ハッブルの発見は驚くべきものでした。
遠方の銀河ほど、より速いスピードで我々の銀河から遠ざかっているのです。



この関係を簡単な数式で表すことができます。
v=H_0 D



まるで我々の銀河が宇宙の中心にいるように見えますがそうではありません。
宇宙のサイズがすべての方向に均等に広がっているので、どの銀河から観測すても、それ以外の銀河はみな遠ざかっているのです。



なお、ハッブル定数は宇宙が膨張していく速さを表しており、さらにその逆数は宇宙の年齢を表しています。




生涯最大の誤り・宇宙項

アインシュタインは自らハッブルを訪れ、観測結果について詳細に聞きました。
宇宙膨張が事実であることを認めたのです。



後に、一般相対性理論に故意に宇宙項を追加したことを悔い、「人生最大の誤りであった」と語ったそうです。




ダークエネルギーと宇宙項の復活

ビッグバン理論が定着すると、宇宙はこのままの勢いで膨張を続けるのか、あるいは徐々に減速していくのかが議論されました。



宇宙に含まれる物質の総量が大きければ、重力によって膨張にブレーキがかかるので膨張はスピードダウンします。



物質の総量が小さいなら、膨張のスピードは維持されたまま膨張を続けるでしょう。



実際の膨張のスピードを測ってみたところ、1998年に予想外の結果に天文学界は驚きました。
宇宙の膨張は、内部の物質の重力を振り切ってスピードアップしていたのです。



これは、宇宙空間に、重力に逆らう力が作用していることを意味しています。
この力の根源をダークエネルギーといいます。



宇宙は137億年前に誕生し、膨張を続けてきました。
最初は、ほぼ一定のスピードで膨張してきましたが、70億年前から膨張のスピードが速くなっているのです。



宇宙空間が膨張するにつれ、宇宙の中身はだんだんとスカスカになっていくのだ。



一方のダークエネルギーが空間を占めている密度は一定と考えられています。



宇宙空間が膨張しても、一定の体積中には一定量のダークエネルギーが満ちています。



宇宙がまだ小さかったころ、物質の密度が高いので引力のブレーキが効いていました。
引力がダークエネルギーによる斥力を封じこめたため、宇宙は加速膨張しなかったのです。



膨張によって宇宙のサイズが大きくなると、物質の密度が低くなって引力が弱くります。
こうなるとダークエネルギーによる斥力が目立ってきます。
このため、宇宙の膨張のスピードが速くなったのです。



膨張が加速しているのだから、宇宙の方程式を、斥力を考慮して補正しなくてはなりません。
アインシュタインが、最大の失敗として捨てた宇宙項が思わぬ所から復活したのです。




神はサイコロで遊ばない

20世紀に大きく発展した物理学の分野は相対性理論と量子論です。
相対性理論はアインシュタインが、ほとんど独力で完成させましたが、量子論は多くの学者達によって発展しました。

アインシュタインは、光電効果の理論的研究によって量子力学の開拓に貢献しました。
しかし、その後、量子力学の確立的解釈に納得することができず、量子力学が誤っていることを証明しようとしたのです。



重力と電磁気力

物体は地球に向かって落下します。
月は地球の周囲を公転します。

かつて、物体の落下と月の公転は、違う法則によって起こる現象だと考えられていました。
ニュートンは、その洞察力によって、物体の落下も月の公転も共通の法則が原因であると見抜きました。これが万有引力の法則です。



ニュートンは落下と公転を一つの理論に統一したのです。



電気の力と磁力も別々の法則によるものだと考えられていました。
マックスウェルは、この二つが同じものであることを突き止め電磁力として統一しました。



このように物理学の発展の歴史の中には、別々に思われていた法則が実は同じだったということが起こります。
アインシュタインも特殊相対性理論の中でエネルギーと質量を統一しました。



一般相対性理論の正しさが証明されると、アインシュタンは電磁力と重力の統一を目指すようになります。



アインシュタンは30年の時間をかけて重力と電磁気力の統一を目指しますが結局うまくいきませんでした。



この世界に力は4種類の力があります。重力、電磁気力、強い力、弱い力です。
強い力、弱い力は原子核の中で生じる力なので、日常でこられを感じることはできません。


「手で壁を押したときに感じる力は?」と聞かれるかもしれません。
これは電磁気力です。筋肉の伸縮は筋肉組織に含まれる原子間の電気的な反発や吸引で起こるからです。
日常で感じる力は、分解して考えれば重力か電磁気力に還元されます。



アインシュタインの時代には強い力、弱い力は知られていませんでした。



4つの力のうち、弱い力と電磁気力はワインバーグ=サラム理論によって統一されました。
されに、これに強い力が大統一理論によって統一されようとしています。



大統一理論は、理論としてはほぼ完成しているのですが、内容が正しいかどうか、まだ確かめられていません。
大統一理論によれば、壊れないと信じられていた陽子が崩壊すること、絶対にないと思われていた磁気単極子が存在することが理論的に導かれます。



ということは、陽子の崩壊や磁気単極子が発見されれば大統一理論が正しいことになります。
小柴昌俊教授は陽子の崩壊の瞬間を捉えようとカミオカンデを運用していましたが、期せずして超新星爆発に伴うニュートリノを観測しノーベル賞を受賞しました。



現代の科学では、上記の順番で力の統一を進めています。
いきなり、電磁気力と重力を統一しようとしたアインシュタンの考えには無理があったのです。

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